ビタミンDには、がん予防効果が期待されております。これは細胞の増殖抑制や、細胞の自然な死を促進する働きを持つことが関与しております。特定の腫瘍の環境では、免疫細胞が浸潤することで、ビタミンDサプリメントの投与によりがんの再発リスクが減少することも報告されており、ビタミンDがp53抗体を抑制する免疫を活性化し、がんの再発や死亡リスクを低減する可能性を検証するための仮説が立てられました。
ここではビタミンDとがんの発症リスク低下について説明しています。
▼ ビタミンDとは?
骨を丈夫にするために必要な脂溶性のビタミンのこと
ビタミンDは、しいたけなどのきのこ類、鮭などの魚類や卵に含まれております。
ビタミンDには6種類(D2からD7)ありますが、D4~D7に関しては食品にほとんど含まれず、活性も低いため、一般的には生理活性が高いとされるビタミンD2(エルゴカルシフェロール)とビタミンD3(コレカルシフェロール)の2つに大別されます。
ビタミンDとがん研究
ビタミンDは脂溶性の栄養素であり、骨の代謝においてカルシウムと共に重要な役割を果たします。近年の実験研究からは、細胞の増殖を抑制し、細胞の死を促進する作用があることから、がん予防効果が期待されております。
血中ビタミンD濃度が上昇すると大腸がん・肺がん・乳がん・前立腺がんの罹患リスクが低下する傾向が観察されておりますが、それ以外のがんの種類に関しては、研究がまだ不十分であり傾向分析が必要な状況です。
▼ 血中ビタミンD濃度とがん罹患リスク低下との関連性
血中ビタミンD濃度とがん全体および特定のがんの部位との関連性の研究が行われました。
血中ビタミンD濃度は季節により変動するため、採血した時季でグループ分けをし、さらに年齢・性別・喫煙・飲酒・身体活動・がん家族歴・糖尿病の既往・体格指数(BMI)など、がんと関連する要因を統計的に補正し、最も血中ビタミンD濃度が低いグループを基準に比較した結果、2番目に低い血中ビタミンD濃度のグループではがんにかかるリスクが統計的に低下したことが明らかにされました。
また、最も高い血中ビタミンD濃度のグループで最もリスクが低かったことが示されたことで、がんのリスクが統計的に低かったことが分かり、ほぼ全ての部位においては、がん罹患リスクの上昇傾向は観察されなかったと言います。
▼ ビタミンDの摂りすぎには注意?
血中ビタミンD濃度が上昇すると、がんの発症リスクが最大で25%低下することが明らかになっております。また、ビタミンDサプリメントを連日内服すると、がん死亡率が12%減少したという研究結果もあります。
ビタミンDが欠乏した場合は、乳癌や大腸癌などがん発生率が高リスクと指摘されているだけでなく、認知症の高リスク要因としても注目されております。
ただしビタミンDは脂溶性ビタミンのため、過剰摂取による健康障害があることで知られており、ビタミンDの摂りすぎは、高カルシウム血症が起こり、腎機能障害や食欲不振・嘔吐・神経の興奮性の亢進などの症状が現れることが多いと言います。
▼ まとめ
ビタミンDには、がん予防効果が期待されております。ただしビタミンDを摂取しすぎると健康障害の症例があることから、容量と用法を守ることが大切です。
しいたけなどのきのこ類、鮭などの魚類や卵からもビタミンDは補えますが、なかなか食生活に取り入れられない場合は、サプリメントで代用しても良いでしょう。日本人が一生のうちでがんと診断される割合は、6割強であるとの報告もあり、何かしらのかたちでビタミンDを摂取することをお勧めします。