肺がんは肺の気管、気管支、肺胞の一部の細胞が何らかの原因でがん化したものです。
肺に発生する悪性腫瘍で肺そのものから発生したものを原発性肺がんといい、通常肺がんといえば原発性肺がんを指します。一方、他の臓器から発生し、肺に転移したものを転移性肺がん、または、肺転移と呼びます。基本的にがんの性質は、どの臓器から発生したかで決まります。肺がんは、早期であれば手術が最も治癒の期待できる治療法ですが、発見された時には進行している場合が多く、手術のほかに放射線治療や抗がん剤治療、さらにこれらを組み合わせた治療が選択されます。全身のがんの中では、最も治療が難しいがんの一つです。
肺がんは進行するにつれて周りの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパの流れに乗って広がっていきます。喫煙との関係が非常に深いがんですが、たばこを吸わない人でも発症することがあります。周囲に流れるたばこの煙を吸う受動喫煙により発症リスクが高まることもわかっています。
【主な症状】
咳、呼吸困難(息切れ、息苦しさ)、体重減少、痰、血痰けったん(血の混じった痰)、胸の痛みなどがあります。
【肺がんの病期(進行度・ステージ)】
肺がんと診断されたら、そのがんがどのくらいの大きさなのか、他の臓器まで広がっていないかどうか、さらに詳しく検査を行い、がんの進行度合い(病期、ステージ)を決めます。
病期の評価にはTNM分類と呼ばれる分類法を使用します。これは、「がんの大きさと浸潤(T因子)」「リンパ節転移(N因子)」「遠隔転移(M因子)」の3つの因子について評価し、これらを総合的に組み合わせて病期を決定する方法です。
肺がんでは、病期は0期、Ⅰ期(ⅠA、ⅠB)、Ⅱ期(ⅡA、ⅡB)、Ⅲ期(ⅢA、ⅢB)、Ⅳ期に分類されます。
~がんの大きさと浸潤(T因子)~
T因子(T:原発腫瘍 primary Tumor)は「がんの大きさと浸潤」を示します。
がんの大きさと浸潤(がんが周囲の臓器に入り込むこと)の状態によって、T1~T4の4段階に分類します。
T1a | 腫瘍の最大径が2cm以下 |
T1b | 腫瘍の最大径が2cmを超えて3cm以下 |
T2a | 腫瘍の最大径が3cmを超えて5cm以下、あるいは3cm以下で胸膜に浸潤がある |
T2b | 腫瘍の最大径が5cmを超えて7cm以下 |
T3 | 腫瘍の最大径が7cmを超え、胸壁(きょうへき)、横隔膜(おうかくまく)、胸膜(きょうまく)、心嚢(しんのう)(心臓を覆う袋状の膜)などに浸潤がある、または主気管支への浸潤が気管分岐部から 2cm 未満 |
T4 | 縦隔(じゅうかく)、心臓、大血管、気管、食道などへの浸潤がある |
~がんの大きさと浸潤(T因子)~
N因子(N:所属リンパ節 regional lymph Nodes)は「リンパ節転移」を示します。リンパ節転移のない場合はN0、転移がある場合にはどこまで転移しているかによってN1~N3の3段階に分類します。
N0 | 所属リンパ節転移なし |
N1 | がんのある肺と同じ側の気管支周囲かつ/または同じ側の肺門、肺内のリンパ節への転移がある |
N2 | がんのある肺と同じ側の縦隔かつ/または気管分岐部のリンパ節への転移がある |
N3 | がんのある肺と反対側の縦隔、肺門(はいもん)、同じ側あるいは反対側の前斜角筋(ぜんしゃかくきん)(首の筋肉)、鎖骨上窩(さこつじょうか)(鎖骨の上のくぼみ)のリンパ節への転移がある |
~進行度・ステージ~
病期(ステージ) | T(腫瘍) | N(リンパ節) | M(転移) |
ⅠA期 | T1a(≦3cm) | N0 | 遠隔転移なし |
ⅠB期 | T1b(≦5cm) | N0 | 遠隔転移なし |
ⅡA期 | T2a(≦5cm) | N1 | 遠隔転移なし |
ⅡA期 | T2b(≦7cm) | N0 | 遠隔転移なし |
ⅡB期 | T2b(≦7cm) | N1 | 遠隔転移なし |
ⅡB期 | T3(›7cm、胸壁浸潤等) | N0 | 遠隔転移なし |
ⅢA期 | 大きさ無関係 | N2 | 遠隔転移なし |
ⅢA期 | T3(›7cm、胸壁浸潤等) | N1 | 遠隔転移なし |
ⅢB期 | 隣接重要臓器に浸潤 | N2 | 遠隔転移なし |
ⅢB期 | 大きさ無関係 | N3 | 遠隔転移なし |
Ⅳ期 | 大きさ無関係 | 転移の有無無関係 | 遠隔転移あり |
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