体を動かすための組織や器管のことを運動器(骨・関節・軟骨・筋肉・神経などの総称)と言います。
私たちは運動器に支えられて生きておりますが、この機能がひとつでも故障したり、連動がうまく働かなかったりすると、寝たきりを招く危険性があります。
ここでは運動器症候群とも呼ばれるロコモティブシンドロームについて説明しております。
▼ ロコモティブシンドローム(ろこもてぃぶしんどろーむ)とは
ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)は、ロコモと略されて表記されることがあります(以下「ロコモ」という)。
ロコモは、立つ・歩くといった動作が思うように行かなくなると、徐々に筋肉や関節が衰えてしまうため、やがては動くことすら困難な状況に陥ります。
特に女性や肥満の人はロコモになりやすいことが知られており、筋力が衰えてしまう高齢者もなりやすいと言われております。
年齢を重ねるごとに徐々に運動器の機能は低下していきます。高齢になっても自分で歩けるようにするには、ロコモを予防することが大切です。
このことは、日本人が健康寿命を延伸していくうえで非常に重要な要素のひとつです。
▼ ロコモの原因
老化により衰えてしまう運動器ですが、ロコモには運動不足や栄養の偏り、肥満や痩せすぎなど生活習慣も大きく関わっております。
現代社会では、エレベーターやエスカレーター、車など移動手段が容易になり体を動かす機会が減っております。
運動習慣のない生活を続けたり、偏食による肥満は膝や腰などの関節に大きな負担がかかることから、運動器の機能低下につながります。
また痩せすぎは、体を支える骨や筋肉を弱くしてしまい、骨折など故障が起こりやすくなります。
体の故障は運動器の衰えを進めてしまう原因にもなりますので、注意する必要があります。
ロコモは骨や関節、神経に関連する病気が原因となる場合があります。
骨や関節、神経に関連する病気の代表的なものは以下の通りです。
変形性膝関節症…膝の関節にある軟骨がすり減り、膝の骨に変形や関節炎が起こります。
骨粗しょう症…骨密度が低下して、骨折を起こしやすくなります。
脊椎管狭窄症…神経が圧迫され、脚に痺れや痛みが起こります。
高齢者の多くは、腰が痛い・膝が痛い・背中が丸くなったなどの症状があっても、老化によるものと思ってしまいますが、放置していると運動器の衰えが進行してしまい、ロコモの危険性が高まります。
このような場合は早期発見・早期治療が大切です。まずは整形外科や神経科などで診断してもらい、治療が必要な場合は治療に専念するようにしましょう。
▼ ロコモの放置は認知症や骨粗しょう症を引き起こしやすい
ロコモによる移動機能の低下は寝たきりの状態をつくりやすく、最低限の日常生活動作(ADL)さえも自立して行えなくなる恐れがあります。
日常生活動作を行えなくなると健康寿命が短くなります。
寝たきりは考えることが少なくなるため、認知症を引き起こしやすくなります。
認知症の方が移動する際は、転倒率が健常者の5倍というデータもあるように、運動器の機能低下から骨粗しょう症になりやすいと言われております。
骨粗しょう症が進行すると痛みのないままに背骨の骨折が繰り返され、背中が丸くなります。次第に日常生活動作にも影響が出てしまい、結果寝たきりとなる可能性が高く負の連鎖が始まります。
▼ ロコモの予防には運動と食事がポイント
ロコモを予防するには足腰の筋力維持が重要です。
他にも、日々の生活の中で適切な運動を習慣的に行うことと、5大栄養素と呼ばれる炭水化物・脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラルを含む栄養バランスのとれた食事をすることが重要です。
足腰の筋力維持は、骨粗しょう症の予防になるほか、膝や腰の痛みの予防と改善につながります。
また栄養バランスのとれた食事に加え、摂取カロリーに気をつけることで肥満を予防できます。
肥満は認知症になりやすいだけでなく、運動器の機能維持にも効果が見込まれます。
運動量は無理なく継続して行うことがポイントです。もし持病や痛みなどがある場合は、主治医と相談すると良いでしょう。
▼ まとめ
筋肉や骨は環境に応じた最適な強度を持つように作りかえられていく仕組みになっているため、適度な負荷をかけることで丈夫になります。
しかし人間の筋肉や骨密度は、30歳前後でピークを迎えてから徐々に低下していきます。
骨と筋肉は50代から衰えやすくなりますが、運動器は自分の意思により動かせる器官であり、骨と筋肉は自分の意思で鍛えることもできます。
ロコモに陥るかどうかは、本人の意識に大きく左右されるため、早めに対策を始めることをお勧めいたします。