慢性糸球体腎炎(まんせいしきゅうたいじんえん)|用語集

医療に関する業界の専門用語等、意味をわかりやすいように解説した用語集・辞典です。外科・整形外科等の病院に関する用語について紹介しています。ご自由にお役立て下さい。

慢性糸球体腎炎(まんせいしきゅうたいじんえん)

血尿や蛋白尿が長期間(少なくとも1年以上)持続してしまう病気のことです。


糸球体に慢性的な炎症が起こるために、血尿・蛋白尿を認める疾患です。慢性糸球体腎炎は、広義ではネフローゼ症候群をおこす疾患を含む一次性の糸球体腎炎をすべて含みますが、ここではIgA腎症を中心に説明します。

IgAとは本来は生体を守るべき免疫物質の一つであるImmunogloburin A(免疫グロブリンA)の略です。
感冒や扁桃腺炎などによりこのIgAの違うタイプが出現し、腎臓の糸球体に沈着し炎症を起こすことにより、血尿や蛋白尿が出現する慢性の腎炎です。
比較的若い方に多い疾患ですが、あらゆる年代でみられます。


【症状】
ほとんどが無症状で検診を契機に発見されることが多いのですが、扁桃腺炎などに罹った後にみられる肉眼的血尿で見つかることもあります。
まれにネフローゼ症候群や急速進行性糸球体腎炎で発症する方もいます。


【検査所見】
尿検査では、血尿と蛋白尿を認めます。発症初期には蛋白尿を認められないこともありますが、血尿は炎症の強さを反映するともいわれており、重要な徴候です。腎機能は正常の方がほとんどです。


【診断】
確定診断には腎生検が必要です。腎生検では、糸球体のメサンギウム領域の細胞増殖と糸球体メサンギウム領域のIgAと免疫成分の一種である補体のC3の沈着を認めます。


【鑑別診断】
感染後に発症するので、急性発症した場合のIgA腎症との鑑別診断に迷うことがあります。
また、その他の腎炎(膜性増殖性糸球体腎炎、ループス腎炎)でも急性糸球体腎炎と同様の腎生検所見(管内増殖性糸球体腎炎)を呈することがあり、臨床経過と併せた鑑別が必要です。


【予後】
IgA腎症は、1968年に発見された比較的歴史の浅い疾患で、昔は「予後がよい」とされていましたが、1990年代になり「20年で40%前後が腎不全に至る」ことが報告されました。
慢性的に糸球体の炎症が続き(持続性の血尿・蛋白尿)、徐々に糸球体が硬化することにより、腎機能が低下(老廃物の濾過ができなくなる)してしまいます。

糸球体を「家の火事」に例えると、「火事」が起きて、消火できないと「焼け跡」になり、「家」として機能できなくなることに似ています。このように、決して「予後がよい」疾患ではないことがわかってきました。

慢性糸球体腎炎の予後が良い予後が良くない腎不全

【治療方法】
異常IgAの産生を抑えるための扁桃摘出術を行ったうえで、糸球体の炎症を抑えるためのステロイドパルス療法を組み合わせた治療(扁摘パルス療法)を行います。
特に、血尿が持続している場合には良い適応です。尿所見が寛解(尿蛋白・尿潜血の陰性化)した患者さんはすべて、10年後でも腎不全に進行しなかったという報告もあります。

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